頑張りすぎて燃え尽きるのはなぜ?組織行動論で読み解く「やる気の終わり方」

「テスト勉強は頑張っていたのに、最近まったくやる気が出ない…」
「サークルのリーダーとして走り続けてきたけど、なぜか楽しくない」
「1年間ずっと就活を頑張ってきたけど、何のためにやっているんだっけ?」

これらの言葉が、別々ではなく、同じ時期に頭に浮かぶことはありませんか。あるいは、友人からこんな相談を受けたことはないでしょうか。実はそれ、あなただけの問題ではありません。

世界的にも、頑張り続けた末にやる気を失ってしまう人は増えています。日本の大学生の間でも、息苦しさを感じ、「もう頑張れない」と感じてしまうケースは少なくありません。

この記事では、組織行動論という学問の視点から、バーンアウト(燃え尽き症候群)が引き起こす「やる気の欠如」のメカニズムを解き明かします。

さらに、今日から使える予防法や対処法、そして専修大学の学生相談室で伺った専門家のアドバイスも交えながら、具体的にお伝えします。

まず知っておきたいバーンアウト(燃え尽き症候群)とは?

 「バーンアウト」という言葉を初めて用いたのは、アメリカの心理学者 ハーバート・フロイデンバーガー(Herbert Freudenberger) です。

彼はバーンアウトを、次のように定義しました。

「職務上の負荷が長く続き、個人のエネルギーが枯渇した結果、目的達成感や意欲が失われる状態」つまりバイトや就活などで忙しい状況が長く続いてしまうと体力だけではなく気力や心の余裕が削られてしまい、どうでも良くなってしまう状況

アルバイト、就職活動、サークル活動など、忙しい日々が続くと、体力だけでなく、気力や心の余裕まで削られていきます。

その結果、「どうでもいい」「もう頑張れない」と感じてしまう状態が、バーンアウトです。フロイデンバーガーがこの概念を提唱したのは1970年代。医療現場で働く中で、献身的に働いていた同僚たちが次々と無気力になっていく姿を目の当たりにしたことがきっかけでした。特に重要なのは、バーンアウトに陥りやすいのは「怠けている人」ではなく、真面目で責任感が強く、一生懸命な人だという点です。

バーンアウトには主に、次の3つの典型的な症状があります。

  • 情緒的消耗感
     心が疲れ果て、何をしても楽しいと感じられない状態
  • 脱人格化
     人や物事に対して冷めた態度を取るようになること
  • 個人的達成感の低下
     「自分は何をやってもダメだ」と感じてしまう感覚

これらが重なると、以前は情熱を注いでいたことさえ、まるで他人事のように感じられてしまうのです。

実は多い?学生相談室に寄せられる「燃え尽き」の悩み

今回、専修大学学生相談室カウンセラーの 光川利恵さん にお話を伺いました。

Q:バーンアウトの兆候には、どんなものがありますか?

燃え尽きている本人は、自分が燃え尽きていることに気づかない場合が多いんです。変化は早い段階から起きていて、「眠れなくなる」「食欲が変わる」「イライラしやすくなる」など、人によって表れ方はさまざまです。そして一番大きな兆候は、「今までできていたことが、急にできなくなる」ことです。

学校に来られなくなったり、友達との約束に行けなくなったりすることもあるそうです。

Q:それは、普段きちんとできている人にも起きるのですか?

はい。むしろ、いつもできている人が突然できなくなったときに、バーンアウトを疑います。

Q:「頑張り」と「頑張りすぎ」の境界線はどこにありますか?

とても難しいですが、大切なのは「自分をどれくらい客観的に見られているか」です。
「ちょっと無理しているかも」と気づけるかどうかが、一つのボーダーラインになります。

Q:予防としてできることはありますか?

自分のキャパシティを把握し、休むことも計画に入れることです。人は機械ではありません。ずっと動き続けることはできないんです。

Q:学生相談室では、どんなサポートをしてもらえますか?

まず「頑張りすぎていたのではないか」という事実を一緒に確認します。その上で、今後どうセルフマネジメントしていくかを考えます。必要であれば医療機関につなぐこともあります。

光川さんは最後に、こんな言葉をくださいました。

「まずは相談する力を身につけてほしい。他人に頼ることは、決して負けではありません。頑張れる環境が整っているからこそ、頑張れているという側面もあるんです。」


組織行動論で読み解く―なぜ私たちは燃え尽きるのか?

バーンアウトは「運が悪かった」わけでも、「自分が弱い」からでもありません。ある法則に沿って起きている現象だと考えられています。

それを説明するのが、Job Demands–Resources(JD-R)モデル です。

このモデルでは、

  • 仕事や役割の要求度(Demands)
  • それに対処するための資源(Resources)

このバランスによって、バーンアウトに陥るかどうかが決まると考えます。

学生にとっての「要求度」とは、レポート、試験、サークル運営、アルバイト、就職活動など。一つひとつはこなせても、重なれば重なるほど負荷は増大します。

一方、「資源」とは、信頼できる友人、休息の時間、十分な睡眠、家族の支え、そして「自分で選んでいる」という感覚です。

要求が増える一方で資源が減っていくと、「やりたい」よりも「やらなきゃ」という義務感が強くなります。その結果、ある日突然「もう無理だ」と感じてしまうのです。

♢組織行動論で読み解く:なぜ私たちは燃え尽きるのか?

 実はバーンアウト「運が悪かった」とか「自分が弱いから」ではなく、ある法則に沿って起きていることが分かっているんです!

それを説明してくれるのが「Job Demands-Resources(JD-R)モデル」という理論です。JD-Rモデルを簡単に説明すると私たちが直面する「仕事の要求度(Demands)」と、それに対処するために使える「資源(Resources)」のバランスで、バーンアウト状態になるか決まるという考え方です。

まず「要求度」とは何でしょうか?学生で言えば、定期試験のレポート課題、サークルのイベント運営、週4日入っているバイトのシフト、そして就活の面接準備。これらすべてが要求度です。一つひとつは「まあ、なんとかなるか」と思えても、二つ、三つと重なると、途端に息苦しくなります。

一方「資源」とは何でしょうか?これは信頼できる友人や先輩、趣味でリフレッシュする時間、十分な睡眠、家族のサポートだったり、自分で物事を決められる感覚などの心のエネルギーを回復してくれる存在のことを指します。

皆さんも自分に置き換えて想像してみてください。例えばゼミやサークルのリーダーを任され、就活なども本格化。さらにバイトにも入らなければいけない。こういった要求が続きますが、忙しすぎて友人と遊ぶ時間は0、さらには睡眠時間も毎日5時間しか取れない。このような状況では「やりたくてやってる」というより「やらなきゃいけない」という義務感の方が強くなってしまいます。その結果、ある朝突然「もう何もかも無理」という状態に陥ってしまうのです。

「そんな理由で行っていいんだ」学生相談室の本当の姿

取材を通して、学生相談室の印象は大きく変わりました。学生相談室は、「本当に困ったときだけ行く場所」ではありません。年間600人以上の学生が利用し、恋愛、進路、部活、単位、ちょっとした悩みまで、何でも相談できる場所です。

40〜50分間、話をじっくり聞いてもらう中で、自分の中で答えが見えてくることもあります。「別にサボっているわけじゃないけど、やる気が出ない」。そんな違和感を感じたら、それは立派な相談理由です。

頑張れなくなったとき、それは「怠け」ではなく、「サイン」かもしれません。組織行動論を学ぶことは、組織を理解するだけでなく、自分自身を守ることにもつながります。

<参考>
学生相談室:https://www.senshu-u.ac.jp/campuslife/counselling/

取材・文:経営学部3年 座間勇輔
写真:専修大学学生相談室カウンセラー 光川利恵
編集:経営学部3年 三沢拓歩
   経営学部3年 青山萌乃実