幼稚園の組織変革に挑戦―「現場で学ぶ経営学」を卒業論文に

経営学部・岩田弘尚ゼミナールでは、企業や地域組織と連携しながら、経営学の理論を実践で学ぶ研究活動に取り組んでいます。今回紹介するのは、経営学部経営学科4年(取材当時)の杉野さんの卒業論文です。

テーマは、「幼稚園における統合報告書導入が組織変革に与える影響 ―Kotterの『大規模な変革を成功に導く八つの段階』を用いて―」です。

3年次から続く産学連携プロジェクトを発展させ、実際の幼稚園を対象に組織変革のプロセスを検証しました。研究の内容や、プロジェクトリーダーとしての経験について話を聞きました。

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3年次のプロジェクトが卒業研究へ

――まず、研究の概要を教えてください。

杉野さん:
3年次に、研究対象である百草台幼稚園の理事長様と先生と私たちで共同してアクションリサーチとして「統合報告書」を作成しました。

統合報告書とは、財務情報だけでなく、教育活動や社会への貢献などの非財務情報も含めて組織の価値を伝える報告書です。

卒業研究では、その統合報告書を実際に組織へ導入したことで、どのような変化が生まれたのかを研究しました。

――なぜこのテーマを選んだのでしょうか。

杉野さん:
一番の理由は、自分たちが作成した統合報告書にどのような効果があるのかを確かめたかったからです。

実は3年生の時にこの統合報告書を研究して会計学の研究大会で優秀賞をいただいているのですが、それで終わりではなく、実際に活用されることで組織にどのような影響を与えるのかを知りたいと思いました。

組織変革を分析するために選んだ理論

――研究では「Kotterの8段階モデル」を活用していますね。

杉野さん:
先行研究を調べる中で、幼稚園のような非営利組織で統合報告書を活用した研究はほとんどありませんでした。

そこで、組織変革を分析できる理論を探した結果、Kotterの8段階モデルに出会いました。

これは、

  1. 危機意識を高める
  2. 推進チームをつくる
  3. ビジョンを示す
  4. ビジョンを共有する
  5. 自発的な行動を促す
  6. 短期的な成果を出す
  7. 改革を継続する
  8. 組織文化として定着させる

という8つの段階で組織変革を捉える理論です。

先生とも相談しながら、自分たちのプロジェクトとの相性が良いと考え、このモデルを採用しました。

計画的に進めた卒業研究

――研究はどのようなスケジュールで進めたのでしょうか。

杉野さん:
テーマ自体は3年次の終わりには決まっていました。

研究では、卒業論文の提出から逆算して計画を立てました。

夏までに文献調査と先行研究の整理を終え、秋からは幼稚園へのインタビューや分析を進めるという流れです。

結果的に予定より少し延びましたが、早い段階から準備していたので、執筆は比較的スムーズに進めることができました。


現場での試行錯誤から得た学び

――研究を進める中で苦労したことはありますか。

杉野さん:
統合報告書について、私たちも幼稚園側もほとんど知識がない状態からスタートしたことです。

何度も話し合いながら、「こうした方が良いのではないか」と試行錯誤を繰り返しました。

また、産学連携では自分たちだけでは進められません。相手との信頼関係づくりやコミュニケーションの難しさも経験しました。


――幼稚園との調整も大変だったのではないですか。

杉野さん:
訪問やインタビューの日程は、毎回こちらから提案して調整していました。

理事長様が「幼稚園をより良くしたい」という強い思いを持ってくださっていたので、私たちの提案にも協力していただき、とてもありがたかったです。


リーダーとして学んだチームマネジメント

――杉野さんはプロジェクトリーダーを務めていました。どのような役割を担っていたのでしょうか。

杉野さん:
主な役割は、ミーティングの準備と進行です。

毎回、「今日は何をするのか」「どこまで進めるのか」という目標を決め、議論を進めていました。

また、事前に資料や議事録を共有し、メンバーが準備できる環境づくりも意識していました。


――リーダーとして大切だと感じたことはありますか。

杉野さん:
一人で抱え込まないことです。

私たちのチームは役割分担を明確にしていて、それぞれの得意分野を活かして進めていました。

私は全体の進行を担当し、執筆や分析は得意なメンバーに任せる場面も多くありました。

「自分でやるべきこと」と「仲間に任せること」を見極めることが、チームを前に進めるうえで大切だと学びました。


現場だからこそ得られる学び

――研究を終えて、一番の学びは何でしたか。

杉野さん:
現場でしか得られない学びがあることです。

文献を読むだけでは分からない、組織が変化していく過程や、そこで働く人たちの思いに直接触れることができました。

また、研究だけでなく、プロジェクトの進め方やリーダーシップについても多くのことを学びました。こうした経験は社会に出てからも必ず活きると思います。


理論を現場で活かす経験が成長につながる

杉野さんの研究は、組織変革論という経営学の理論を、実際の幼稚園という現場で検証した実践的な研究です。

研究活動を通して得たのは、論文執筆の力だけではありません。産学連携の現場で課題を発見し、関係者と協力しながら解決策を考える経験は、将来のキャリアにもつながる大きな財産となりました。

経営学を「知識」として学ぶだけでなく、「現場で活かす力」として身につける――。杉野さんの挑戦は、その価値を示す好例といえるでしょう。


岩田弘尚ゼミナール:https://www.facebook.com/iwata.lab/

取材・文・写真:経営学部3年 大城笑理
編集:経営学部3年 麻場彩花