「デザインと経営」。前提を問い直す学び

大学生活の中で、「考え方そのものが変わった」と感じる授業に出会えることは決して多くありません。

ビジネスデザイン学科3年(取材当時)の見澤拓歩さんに「大学で最も印象に残っている授業」を尋ねると、返ってきたのは「デザインと経営」という答えでした。

ビジネスデザイン学科の学びを象徴するこの授業は、単にデザインの技術や知識を学ぶものではありません。見澤さんは、「考えることそのものをデザインする授業だった」と振り返ります。

授業で投げかけられる問いに向き合う中で、これまで当たり前だと思っていた考え方や価値観が揺さぶられ、自分自身の思考の土台を見つめ直す経験につながったそうです。

「デザイン=形をつくること」ではなかった

――なぜ「デザインと経営」が特に印象に残ったのでしょうか。

見澤さんは、「ビジネスデザイン学科の学びに最も直結している授業だと感じたからです」と話します。

授業は三宅先生、立野先生、山田先生、法林先生の4名の教員が担当し、それぞれ異なる専門分野や視点から、「デザインとは何か」「経営とは何か」という根本的な問いを投げかけていきます。

授業を受ける前、見澤さんはデザインに対して「形をつくること」「見た目を整えること」というイメージを持っていたといいます。

しかし授業では、その固定観念が大きく覆されました。

「デザインとは単にモノの形をつくることではなく、社会の中でどのような意味を持つのか、どのような価値を生み出すのかを考えることだと学びました。」

特に印象に残ったのは、デザインを思想や哲学の視点から捉える講義でした。

「なぜそうするのか」「その背景にはどんな考え方があるのか」といった問いを繰り返し考えることで、表面的な答えではなく、本質を探る姿勢が身についたといいます。


「前提」を疑うことで見えてきたもの

授業では講義を聞くだけでなく、自分自身の考えを整理し、プレゼンテーションとして発表する課題にも取り組みました。

その中で見澤さんが強く意識するようになったのが、「前提を定義すること」の重要性です。

例えば、「コミュニケーションとは何か」というテーマについて考える際も、単に自分の考えを述べるだけではなく、まず自分がどのような意味でその言葉を使っているのかを明確にしなければなりません。

「同じ言葉を使っていても、人によってイメージしている内容は違います。その前提を整理しないまま話をすると、議論がかみ合わないことがあります。」

授業を通して、見澤さんは言葉の定義や前提条件を意識するようになったそうです。

その結果、ゼミ活動やグループワーク、日常の会話でも相手との認識の違いを意識できるようになり、以前よりも円滑なコミュニケーションが取れるようになったといいます。

「話が噛み合わないときは、お互いの考え方ではなく、前提や定義が違っていることも多いと気づきました。今はまず、その部分を確認するようにしています。」


知識ではなく「思考の型」を学ぶ

見澤さんは、この授業で得た最大の学びは知識そのものではなく、「考え方の型」だったと話します。

授業で繰り返し求められたのは、物事を表面的に捉えるのではなく、「なぜそうなのか」を掘り下げる姿勢です。

プレゼンテーション課題では、自分の考えを論理的に整理し、他者に伝わる形で構成する力も養われました。

「以前は、自分の中では理解できていても、それを相手に分かりやすく説明することが苦手でした。」

しかし、発表とフィードバックを繰り返す中で、「自分が理解していること」と「相手に伝わること」は違うと実感したそうです。

現在ではゼミ活動やインタビュー記事の執筆、グループでの議論など、さまざまな場面で授業で学んだ思考法や構成力が活かされているといいます。


「考えること」が好きな人にこそ勧めたい

――この授業はどのような人に向いていると思いますか。

見澤さんは少し考えた後、こう答えてくれました。

「知的好奇心が強い人や、自分の考えをもっと深めたい人におすすめしたいです。」

デザインに興味がある人はもちろんですが、それ以上に、「なぜそうなるのかを考えることが好きな人」に向いている授業だといいます。

授業では明確な正解が与えられるわけではありません。

むしろ、問い続けることそのものに価値があります。

だからこそ、自分自身の考え方を見つめ直したい人や、新しい視点を得たい人にとって、大きな学びの機会になると感じているそうです。


「○○とは何か」を問い続けられる人へ

最後に、将来どのような人になりたいかを尋ねると、見澤さんは印象的な言葉を語ってくれました。

「自分が向き合うものに対して、『○○とは何か』を自分なりにしっかり定義できる人になりたいです。」

デザインとは何か。

経営とは何か。

コミュニケーションとは何か。

授業の中で繰り返し投げかけられた問いは、今も見澤さんの思考の中心にあります。

「デザインと経営」は、知識を学ぶ授業ではなく、自ら問いを立て、考え続ける力を養う授業です。

そこで培われた“問い続ける姿勢”は、見澤さんがこれからどのような道に進んだとしても、物事の本質を見極めるための大きな力となっていくことでしょう。

<クレジット>
取材・文:経営学部3年 落合ひかる
編集:落合ひかる+木谷宗義/type-e