経営学部生が元トップフレンチシェフと挑戦!即日完売の「BENTO」開発プロジェクト

経営学部・岩田弘尚ゼミナールでは、標高1,500mに位置する長野県姫木平のテロワール(その土地ならではの自然環境)を活かしたナチュラルハムづくりに取り組む「ジャンボン・ド・ヒメキ」と産学連携を行っています。

その活動の一環として、2025年10月に長野県茅野市・車山高原で開催されたフランス車の祭典「アロンフランセ車山」に出店。学生たちは企画から商品開発、原価管理、仕入れ、販売までを担い、「長野県×フレンチ」をテーマにしたオリジナル商品「BENTO」を開発しました。

フランス車愛好家が集う会場で販売されたBENTOは大きな注目を集め、用意した商品は当日中に完売。その中心となってプロジェクトを牽引したのが、経営学部経営学科3年(取材当時)の増田丈一郎さんです。今回の挑戦から得た学びについて話を聞きました。

「理論を実践で試したい」から始まった挑戦

増田さんは、もともと商品開発に取り組みたいという思いから岩田ゼミに所属しました。

岩田ゼミでは、ジャンボン・ド・ヒメキ代表の藤原伸彦氏と連携し、「地方創生の管理会計」をテーマに実践的な活動を行っています。歴代のゼミ生も商品開発プロジェクトに取り組んできたことから、「自分たちの代でも挑戦したい」と考えたそうです。

「経営学で学んだ理論を、実際の現場で活用してみたかったんです。プロジェクトを成功させることで、自分自身の成長にもつながると思いました。」

原価管理で学んだ「品質とコストのバランス」

商品開発で最も意識したのは、原価管理(商品をつくるためのコストを把握・管理すること)でした。

チームでは「原価率(売上に対する原価の割合)を4割程度に抑える」という目標を設定。しかし、メイン食材として高品質な信州太郎ポークを使用するため、単純にコストを削減することはできませんでした。

そこで重視したのが、「どこにお金をかけ、どこで調整するか」という考え方です。豚肉の品質は維持したまま、野菜などの食材については長野県内の直売所を何度も巡り、品質と価格のバランスが取れたものを探しました。

「講義では飲食店の原価率について学びますが、実際に自分たちで管理してみると理解の深さがまったく違いました。理論と現場がつながった瞬間でした。」

シェフ監修のもとで緊張しながら試作中

ターゲットを見据えた商品づくり

企画段階では、「誰に、どのような価値を、いくらで提供するのか」を徹底的に考えました。

過去の調査データや先輩たちの知見を活用し、市場調査を実施。アロンフランセ車山には、フランス車を所有する40~60代の来場者が多いことから、「価格よりも品質やストーリーを重視する層」をターゲットに設定しました。

その結果、ボリュームや安さではなく、「素材の良さ」や「丁寧なものづくり」が伝わる商品を目指したといいます。

また価格設定も、原価だけでなく「この客層ならどの価格帯に価値を感じてもらえるか」という視点で検討。マーケティングで学んだターゲティングやペルソナ設定(顧客像を具体的に想定する手法)、価値提案の考え方を実践に活かしました。

リーダーとして学んだ意思決定の難しさ

プロジェクトリーダーとして苦労したのは、チームでの意思決定でした。

メニューや味の方向性について意見が分かれることも多く、議論を重ねるほど選択肢が増え、なかなか結論が出ない場面もあったそうです。

そんな時に意識したのが、岩田先生から学んだ「リーダーシップとマネジメントの違い」でした。

「リーダーシップは方向性を示すこと、マネジメントはその方向へ計画的に進めること。両方を意識して行動しました。」

また、メンバーが自由に意見を言える心理的安全性を大切にしながら、「今回のBENTOで何を伝えたいのか」という原点に立ち返り、議論を進めていったといいます。チームで意思決定をすることです。

「誰に食べてもらうのか」を考える

商品開発を進める中で、シェフからかけられた言葉が強く印象に残っているそうです。

「誰に食べてもらう料理なのかを、常に考えなさい。」

試作していたキャロット・ラペ(フランスの定番のにんじんサラダ)がなかなか完成形にたどり着かなかった時、シェフから「日本人の舌に合う工夫をしてみては」と助言を受けました。

その言葉をきっかけに調味料を見直し、試行錯誤を重ねた結果、「梅香るキャロット・ラペ」が誕生しました。

「ただ美味しい料理をつくるのではなく、食べる人を想像することの大切さを学びました。」

即日完売を支えたストーリーの力

増田さんは、BENTO完売の要因として、市場調査と当日のプロモーションの両方が機能したことを挙げます。

当日は積極的に来場者へ声をかけ、商品の背景やこだわりを自ら説明しました。

「藤原さんから、『本当に効果的な販促は、その商品をつくった人にしかできない』と教わりました。商品そのものだけでなく、その背景にあるストーリーや思いを伝えることで価値が生まれると実感しました。」

さらに、ジャンボン・ド・ヒメキが長年築いてきたブランドへの信頼も大きな力になったと振り返ります。パッケージデザインもブランドイメージに合わせ、高級感を意識して制作しました。

実践が経営学を「自分の知識」に変える

イベント当日、最初の1個が売れた瞬間、そして最後の1個が売れた瞬間は今でも忘れられないといいます。

「前日は不安で眠れませんでした。でも、お客様から『美味しかったよ』と言っていただいた時、それまでの苦労が一気に報われました。」

今回の経験を通じて、増田さんは「経営学の知識は実践して初めて意味を持つ」と実感しました。

原価管理、マーケティング、チームマネジメント――教室で学んだ理論が現場でつながった経験は、今後の学びやキャリアにも大きく活きるといいます。

「企画から販売まで責任を持って取り組み、リーダーとしてプロジェクトを成功させた経験は、自分にとって大きな自信になりました。理論と実践を結び付ける力は、どの業界でも求められる力だと思います。」

経営学を「学ぶ」だけでなく、「実践する」。岩田ゼミの産学連携プロジェクトは、学生たちに教室だけでは得られない学びをもたらしています。

岩田弘尚ゼミナール:https://www.facebook.com/iwata.lab/

取材・文:経営学部ビジネスデザイン科  3年 見澤拓歩
編集:経営学部経営学科 3年 座間勇輔 青山萌乃実
   ビジネスデザイン学科 3年 落合ひかる
※学年は執筆時